このまま誰かが出てくるのを待つしかないのだろうか。



そう諦めてしゃがみ込んだ瞬間だった。



カチャンと静かに音がなり、ゆっくりと扉が開いた。




下ろしたばかりの腰を慌てて立ち上がらせる。




出てきたのは、浮かない顔をした妹だった。




「ねえ、行かなきゃダメ……?」



セーラー服に身を包んでいる妹の肩は下がり切っていた。



妹を見送る母が困った顔で笑う。




「行っておいで。みんな心配してるよ」




「でも……」



「しんどかったら帰っておいで」




優しい母の声に、泣きそうになりながら妹は家に背を向け歩き出す。



兄が死んで、初めての登校だ。



自分ながら一瞬で分かった。



別に自惚れるつもりはないけど、自分の死を悲しんでくれる家族の中にいたことは、生きている間から分かっていた。




もう高校生になる妹でも、なんの恥ずかしげもなく兄のことが大好きだったし、僕も素っ気ない性格ながらも妹からの構ってちゃんに嫌な顔ひとつせず応えていた。