「あれ……」
ドアノブを引っ張ってみるも、びくともしない。
思わず間抜けな声が出た。
鍵がかかっているかとも思ったが、かかっていたとしても、ガチャガチャと数センチ動かすこともできない。
1ミリも動くこともなければ、音もならない。
どうやら幽霊は物を動かすことはできないらしい。
かといって、壁を通り抜けることもできない。
思っていた「幽霊像」と違うことが多すぎる。
自分は怪奇現象を起こせないタイプの幽霊らしいと、少しだけがっかりした。
にしてもこの状況をどう打破していこうか。
僕は自分の家の前で頭を抱えた。
完全に締め出し状態だ。
死んだ息子が帰ってきたというのに。
家の中からバタバタと音は聞こえるため、どうやら起きてはいるようだ。


