夜は来なかった。



太陽があるわけでもないようだが、あたりはずっと明るかった。




風は吹いていないのに、どこか涼しい澄んだ空気をしている。




不思議とお腹も空かなければ、眠くもない。




生前うっすら思い描いていた天国のイメージ通りの居心地だった。




僕と戸倉弥生は天国の不動産を遠くに、それでも見える距離におき、草原の真ん中に座り込んでいた。





「あの戸倉有紗って知ってますか?」




「映画とかでよく見る女優?」




突然の弥生からの質問に、彼女と見た映画を思い出しながら答える。




正統派女優で、ドラマに映画に何本もの主演を演じており、最近特に名前を見た。




それが何か?と言わんばかりに首を傾げて弥生を向いた。