「お母さん…何の話をしているの…?」 「え?」 電車がトンネルに入る。 周りの音を全てかき消すかのような、大きな音を立てて。 だけど、僕には全ての音が消えたような気がした。 「病院、何で今から行くんだっけ…どうして通ってるんだっけ…」 「葵…?」 母親の青ざめた顔。 僕もきっと同じ表情だ。 鏡を見ずともわかる。 葵から僕の記憶が消えた。