「明日花、どうした?」


すぐに異変に気が付いた健がそう聞いてくる。


「電話が繋がってないみたい」


「貸してみろ」


健が受話器に耳を当てる。


あたしは伶香の入れてくれた麦茶をひと口飲んだ。


乾いていた喉が潤い、生き返って行くような感覚だ。


しかし、ホッとしてもいられなかった。


電話が通じないのであれば、ここまで戻って来た意味がないと言う事だ。


あのまま森の中を進んでいく事も難しそうだし、どうすればいいのか振出しに戻っただけだった。


「おいおい、繋がらないなんて冗談だろ?」


弘明がそう言い、少し乱暴に受話器をひったくると耳に当てた。


その表情はみるみる内にこわばって行く。


「どうやら、本当につながらないみたいだな」


トシが呟くように言った。


「そんな……じゃぁ、あたしたちは一体どうすればいいの!?」


伶香が声を荒げて言った。