「この道が通れないなら、森の中を歩くしかない」


健が振り向いてそう言った。


瞬間、みんなに不穏な空気が漂った。


「嘘でしょ?」


「森の中はいくらなんでも危険すぎる」


伶香とトシがそう言った。


小道を一歩外れるとそこはもう異世界だった。


どんな動物が出て来るかわからない。


「沼に沿って歩くのが最短なんだろうけど……」


郁美がそう言い、沼を見た。


沼は森の奥の方まで広がっていてそれがどこまで続いているのかわからなかった。


それに、沼の上に木の葉が積もっていれば命を落とすかもしれない。


「無理だな……」


弘明がため息交じりにそう言った。


太陽は真上にあり、汗がジワリと制服を濡らし始めていた。


人の食べ物だからと思って食料を持ってこなかったことを後悔する。


せめて飲み物だけでも持ってくればよかったのかもしれない。


「一旦、建物に戻る?」


そう言ったのは郁美だった。


「マジかよ」


弘明がうんざりした表情でそう言った。


気持はあたしも同じだった。


ここまで何時間も歩いてきてまた建物に戻るなんて、考えただけでも億劫だった。


でも、進めないんじゃここにいる意味もない。


一度建物に戻り、今後どうするか考える方がいいだろう。