「お蔭であたしの点数は上がってきてるの。明日花には言ってないけど」


そう言い、郁美はペロッと舌を出して見せた。


「そうだったんだ……」


あたしは少しだけ肩の荷が下りた気分になった。


郁美は郁美であたしのやり方を利用していたのだと思うと、なんだかホッとした。


「メークの仕方も、服の選び方も。ほとんど明日花が教えてくれたんだよ」


「そうだっけ?」


「そうだよ。あたしは明日花と遊ぶようになる前は、オシャレに興味なんてなかったもん」


そう言われればそうかもしれない。


地味で目立たない郁美を選んだのはあたしなんだから。


だけど最近の郁美はあか抜けてきて、本当に可愛くなっていた。


何回か学校内で告白されたとも聞いている。


「お互い様なんだよね、あたしたち」


お味噌汁の良い匂いが立ち込めはじめた時、郁美はため息交じりにそう言った。


「どっちも悪くて、どっちも悪くない」


「郁美は、それでいいの?」


あたしをもっと責める事はできるはずだ。


このまま絶縁状態になっても、おかしくない。


そう思っていた。


「うん。昨日1人になってよく考えたの、あたしは明日花の友達でいたいって」


郁美がそう言った時、丁度広間のドアが開き、伶香と弘明が入ってきた。


「うわっ! 今日は2人が作ってくれたの? おいしそう!」


伶香の賑やかな声が響き渡り、あたしと郁美は顔を見合わせて笑ったのだった。