「ねぇ、昨日は……ごめんね」


郁美がグリルから魚を取り出しながらそう言った。


その言葉にあたしハッとする。


「う、ううん。あたしが悪いんだよ」


謝るのはあたしの方だ。


郁美をあそこまで追い詰めたのは、あたしなんだから。


「あたしはずっと明日花が羨ましかったよ」


「え?」


あたしは首を傾げて郁美を見る。


「いつも自身に満ち溢れてて、可愛くて勉強もできて。なんであたしより上を行ってた」


「それは……」


あたしは言葉に詰まり、俯いた。


自分より下の郁美を選らんで一緒にいたのは、あたしだからだ。


「明日花があたしを利用してるんだってことは、本当は最初からわかってたよ」


「え……?」


「だって、あたしと明日花じゃ明らかにタイプが違うもん。クラスで人気者の明日花と、地味なあたし」


「そんな事……」


『そんな事ないよ』なんて、言えなかった。


あたしはその事もちゃんと知っていたのだから。