「伊塚湊(イヅカ ミナト)。てかお前、ちょっと廊下に掃除機かけろ」



名乗りの後に、掃除機かけろという命令が下された。

なぜ。



「え、なんで?」



「スーツケースが砂持って入ってるだろ」



……かなりの綺麗好きみたい。

リビングを生活感のない空間にしたのはこの人だろうな。



「掃除機かけるの苦手なんだよなぁ……」



そうぶつくさ小言を言いながらも私は廊下に行き、備え付けの収納から掃除機を引っ張り出す。



ブスッとコンセントを差し込んで、スイッチON。



……ていうか、なんで私はあの人にいろいろ指図されてるんだろう。
この家の家主の娘は私なのに。