陽向side



帰り道の途中、緑だけの空間の芝生は、俺のお気に入りの時間になっていた。



ある日、いつものように寝そべってぼーっとしていると、どこからか歌声が聞こえ始めた。




その歌は何年か前にヒットしたドラマの主題歌。


切ない声はこの歌にぴったりあっていた。



気づけばずっとその歌を聞いていた。





それから俺は毎日その場所に通った。




細い道からその子を見ると、俺と同じ高校に通ってるみたいだった。




何度も話しかけるタイミングを探っていたけど、なかなか話しかけれなくて、ようやく話しかけたのに。




声をかけ、隣に寝そべるとふたりの間に距離が開く。





詰めるとまた距離が開く。





肩を掴もうと、手を彼女に向けた瞬間、「触らないでッ!」と逃げていった。





そのままぼーっとしていると、あるものが目に入ってきた。




芝生の上に落ちている赤を基調としたリボン。





リボンの裏には「大滝乃愛」と書いてあった。





これって明日大変なんじゃないか?




俺の高校は、校則は厳しいほうではないけど男子はネクタイ、女子はリボンを忘れたら取りにいなければ行けない。



だから、予備に持ってる子もいるくらい。





「いーこと思いついた」




自分でも恐ろしいくらいの笑みを浮かべてた。


俺は、リボンをバックに詰め込み家に向かった。