「おかえりー」
後ろから、声がして歩きながら振り向いた。
「やっぱりストーカー」
「話しかけようとしたけどお前熱唱してるからさっ」
「えっ?うそ!?」
「うっそー」
「ムカつく……」
「明日文化祭だな。明日何時に家出る?」
「いつもと同じ」
「俺も乃愛と同じ時間に出ていくから」
「じゃあ、私時間早めるわ」
「なー」
「………」
私は何も返さず家に入った。
誰かと関わるのはやっぱり怖い。
近づくと、鳴り響くけいおんき。
私はいつからこんなに臆病者になってしまったのだろうか……
渡された交換日記をさっさと書いて昼寝でもしよっと。
ノートを開くと相変わらずのきれいな字。
“なぁ、スイカ好き? ”
そんな問に嫌いと書いてやった。
なつになると家族でおばあちゃんちに行ってスイカとってみんなですいかわりをした。
わたしは小さい頃からスイカがきらいだった。
でも、珍しい黄色のスイカはすきだった……。
母は、おばあちゃんちでも一二個しかならない幻のきいろいすいかを家に持ち帰って二人で食べたこともあった。
あの頃はキラキラとしたたのしみだったりもしたけど今でもおもいだしたくない出来事だ。
夜、私はこっそり家を抜け出し、夜景の見える丘にいた。
「……っ……っ」
私は人知らず泣いた。
こえもださずに静かに泣いた。
いつからか、わたしは笑うことも泣くことすらもわすれてしまった。
そして次の日にはえが
泣くのはいつだって布団の中だった。
気づかれぬよう声を殺して泣いて……泣き続けた。
そして、次の日には笑顔を作った。
なにもなかったように。
ほんとは気づいて欲しかった。
抱きしめて欲しかった。
きのきいた言葉なんていらなかった。
ただそばにいてほしかつた。
暖かいぬくもり欲しかった。
そしたら、それが当たり前となって静かに泣くことしか出来なくなった。
ため息をこぼすぶん、私はゴールのない迷路にはいりこむだけ。

