涙花が咲く頃に



「おはよう」



階段を降りると、ブラウン男に会った。



手に持っていたノートを差し出した。


それを受け取るとパラパラとページをめくった。



「サンキュー」



わたしの手にカツサンドを手において、リビングに戻っていた。





このお店のパンが気に入った私にブラウン男は、朝、昼、晩に渡してくる。




具の種類は、毎日代わる。



玉子だったり、ハムとキャベツだったり……



ちなみにさっきもらったのは、朝だからか、玉子と生クリームといちごのスイーツ系。






「いってらっしゃいー俺も行くけどっ」




こんな感じでいつもお見送りされる。



最初は嫌だったけど、1ヶ月も続くとさすがに慣れた。





振り向きも返事もせずに家を出た。








学校について一番に向かうは、屋上。




「うーーーっ」





両手を上げ、伸びをした。





お昼もなぜかあいつのペースに乗せられて一緒に食べてるし、ひとりになれるのはこの時間だけ。




とはいっても、私はベンチ、あいつは地面だけど。





チャイムがなり、教室に入る。




けど、文化祭が明日だから、教室は椅子と机はなく、もう、お化け屋敷になっていた。



心の中で大きなため息をこぼす。



だ、だって、そんな教室入ったら人とくっついてしまう……。




教室に入るのをためらっていると、担任が入ってきた。




「いーかー?教室は狭くなってるから今いる場所で聞いてくれ。明日はいよいよ文化祭当日だ。今日は各自最終チェックを終えたら各自解散だー!出席確認するから、帰るとき、忘れず俺に声かけるように!」





はぁ……助かった……。





「大滝!ジュースありがとな」



振り向くと、そこにはジュース3箱を頼んだ学級委員がいた。





「重すぎて一気におばさんになるとこだったよ!」




「ほんとありがとう!文化祭終わったら打ち上げしよーぜ!」




「いや、遠慮する!」




「遠慮すんなって!もう少ししたら、バイト代入るしお礼としておごらして」




「んー、じゃ考えとく」



そう言って帰ろうとしたら、



「yesしか受け付けないけどなー」





聞こえてきた声にはいはいと軽く返事して、教室を出た。






「ちょっとちょっと!よらなくていいんだ?」




下駄箱で上履きをしまおうと、しゃがんでいるとさっき教室で別れた学級委員がいた。




その様子は息が切れていて。



肩を上下に上げたり下げたりして呼吸を整えていた。




「なにか?」





「なにって。出席とるから、帰り担任のとこ来いって言ってたの忘れた?」




「あ……そうだった」




ありがとうと、言って職員室の方に足を向けた瞬間、彼は私の隣に肩を並べた。



「俺も行く!」




にかっと爽やか笑顔で言われた。


この笑顔にみんな惚れるんだろうな……。




言ってなかったけど、学年委員長はモテる。



ま、ブラウン男ほどじゃないけど。



髪は黒で無造作に整えてあって、ちゃんと制服も来てる。



ブラウン男とはタイプが違うイケメン。



いわゆる王子様。


他の人は隣にいるとドキドキするんだろうな……。



ちなみに私は違う意味で今心臓がゾクンゾクンいってるんだけど。