朝の6時過ぎーー




私は最寄りの駅より少し遠い小さな駅で、電車を待っている。





駅のホームは私以外にいなく、辺りは静まり返っていた。




普通なら通勤ラッシュで込み合ってる時間だけど、この電車は違う。





知ってる人はいるけど、みんな大きな駅を利用する。




だから、あまり利用する人がいないたった5両の小さな電車。






その電車に乗り込み1時間、学校の近くの駅で降りる。






「おはよう」




「おはようございます」




駅のおばさんとこうやって一言を交わすことが私の日課になっている。





校門をくぐり、私が向かうのは今はもう使われていない旧校舎。




階段を上り、空いたベランダから、柱を登る。




「よいしょっと」



年寄りみたいな声で登った先にあるのは屋上。




旧校舎の方が高いからここにいても誰にもバレないお気に入りの場所。




大の字になって目を閉じる。





私の名前は大滝乃愛。




高校2年生。



そんな私には秘密がある。




それは、




人が怖いこと。


人が近づくと苦しくなったり、逃げ出したくなってしまう……




人間アレルギーなんです……。






学校にいるほとんどをここで過ごしている。





あ、サボってるわけじゃないよ?




ここは人が来ないから。





ここは、幽霊が出るっていう噂があって誰も近づこうとしない。




でも、それは私にとっては好都合。





趣味は歌を歌うこと。





しばらくすると周りが騒がしくなった。





塀から見下ろすと、サッカー部とテニス部の朝練が始まったみたい。