……その夜、こんな夢を見た。
小さい子が、お父さんとお母さんの間にいて楽しそうに笑いあってた。
それは、妹が産まれる前の家族にそっくりだった。
その姿は徐々に離れて行った。
………待って…………!
ーーカンカンカンカン
「朝ですよーっ!おーいー!」
思わず声を出してとめようと思った途端夢の中に聞きたくも無い声が聞こえてきた。
ーーカンカンカンカン
「う、うるさい」
「やっと起きた。目覚ましなっても起きないし、耳元持ってっても起きねぇんだもん。なにが私スパーっと起きるからだよ」
呆れ声がふってきた。
目をこするとくっきりしてきた視界には、何故かフライパンとおたまを持ってるあいつの姿。
「なんでそんなもの」
「何しても起きねぇし、触るなって言われたから、これしかないなって思ってさ」
「これで起きねぇやつはいないと思って」
「じゃ、飯食べよーぜ」
部屋に戻り、制服に着替えバックを持って玄関へ向かう。
ローファーを履いてると話しかけられた。
「朝飯は?」
「いらない」
「えっ?ちょっ、乃愛ーー?!」
そんな声が聞こえたけど、飛び出すように玄関を出た。
そして、屋上へ向かう。
「やっぱここにいた。ほら」
「は?」
「手、出せよ」
いやいや手を差し出すとぽんっとなにかを乗っけられた。
「カツサンド?」
「そっ。俺の手料理食べたくないのわかったけど、朝飯は元気の源だからな。ちゃんと食べろよ」
じゃっ!とアイツは屋上を出ていった。
「……ありがとう」
誰にも聞き取れないような声でそう呟いた。

