ラティアの月光宝花

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「私怒ってるのよ、シーグル」

セシーリアがこう切り出したのは、国王ロー・ラティアをはじめその側近、命を落とした兵士たちの弔が二日間かけて執り行われた翌日の事であった。

自ら怒っていると宣言するだけあり、その頬は心なしか膨らんで見える。

シーグルは手綱を引いてセシーリアの愛馬に速度を合わせると、彼女に問いかけた。

「……何を?」

「何をって、分かるでしょう?」

その顔……相変わらずだな、セシーリアは。

不機嫌なセシーリアの顔があまりにも懐かしくて、シーグルは笑いを噛み殺しながら再び彼女に問いかけた。

「何をですか、女王サマ」

一方セシーリアは、三年間も帰らなかったのに、その間の出来事をなにも語ろうとしないシーグルを腹立たしく思った。

エシャード城主ライゼン・エシャードに会いに行く中、いつ話し出すかと首を長くして待っているというのに、シーグルの口から出るのはエシャードの料理はどうかとか、女性は美人かとか、どうでもよい心配事ばかりなのだ。

その上……ニヤつきながら《女王サマ》ですって?!……舐めてるわね。

セシーリアは馬を止めてすぐさまシーグルの態度を叱ってやりたがったが、それをグッとこらえた。

城を出ていった三年の間に、シーグルはかなり変わった。

身体は大きく成長したし、闘技場でカリムからオリビエを救うために射た矢の腕はかなりのものだった。

それに関してはとても頼もしく嬉しい。