ラティアの月光宝花

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セシーリアが女王に即位したのは翌日の事であった。

「本当なら盛大な戴冠式といきたいところだが、そうもいっていられない」

「分かってる」

ラティア国民に向けての即位報告は既に済ませ、マルケルスは次にやるべき事を淡々と説明する。

「セシーリア。お前は葬祭の儀がすんだらすぐにエシャードへ立て」

ラティア帝国には約三十の主要都市があり、そこには亡き皇帝ロー・ラティアが選り抜いた守備城主が存在している。

「全ての都市に即位報告の使者を立てた。この件は一ヶ月以内に完了だ。だがエシャードには直接出向くんだ」

エシャードとは、王都エルフから五千マイル以上離れた南東に位置していて、イシード帝国との国境に一番近い地方都市である。

「分かった。改めて私の口から即位を報告し、イシード帝国を討つ為の準備を指示するわ」

マルケルスが頷き、更に続ける。

「エシャード城主はまだ若いが非常に頭が切れる。それに代々、大陸全体の地理に非常に詳しいらしい。カリムを討つためには彼の協力が絶対に必要だ」

「おい、マルケルス。簡単に言うなよ。エシャードとの距離は五千マイル以上だぜ?!いくら急いでも片道十日以上はゆうにかかる。そんな長旅、セシーリアが耐えられるわけないだろ」

アンリオンが眉を寄せてこう言うと、マルケルスが言葉を返した。

「この旅が、エシャード城主であるライゼン・エシャードの信頼を勝ち得るのに必要なんだ。しかも宿なんて至るところにあるだろう。甘えたことを言うな」