ラティアの月光宝花

「ああ、そうだ。変わってしまった、何もかも。俺達がなんの心構えも出来ていないまま、皇帝陛下も父上達も死んでしまったんだ」

ギリッとこめかみを動かして、マルケルスは悔しげに棺に眼をやる。

その時、シーグルがセシーリアに腕を伸ばした。

「セシーリア」

逞しい手がセシーリアの手首を掴み、ゆっくりと守護神ディーアの弓ごと持ち上げる。

皆の視線が弓に集まるのを確認すると、シーグルがニヤリとした。

「女神様がくれたこの弓、後生大事に飾っとくのか?」

冗談目かした口調に、セシーリアはすぐ首を横に振る。

「バカ言わないで」

この時のセシーリアには、もう迷いはなかった。

弓を握る手に力を込めるとしっかりとした口調で三人に告げる。

「私、国を継ぐわ。女王になる」

マルケルスをはじめ、アンリオンとシーグルが頷く。

「その言葉を待ってた。セシーリア、イシード帝国を討ち、王や父上達の無念を晴らすぞ」

そうだ。許さない、絶対に。

お父様達を死に追いやり、オリビエを奪ったイシード帝国……カリムを絶対に許さない!

セシーリアはきつく眉を寄せるとシーグルを見上げた。

「ええ。必ずお父様達の無念を晴らし、オリビエを取り戻す。それからカリムを後悔させてやるわ。このラティアを敵に回した事をね」

セシーリアは守護神ディーアの像を仰ぐと、胸に芽生えた憎しみの炎の熱さを感じていた。