月明かりの子守唄

……あまりに見惚れてしまっていて、私は彼にボコボコにされたと思われる学ランの人達をなんとかしないといけないことをすっかり忘れてしまっていた。

彼がゾンビに気を取られている隙に恐る恐る近づいてみれば、のびているのは全員強面。

もしかしてもしかしなくても、この人達はいわゆる暴走族とかヤンキーとかそういう類の人達?


「う…………」


良かった。息はある。それにしてもこの人達を一人で倒した……のではなくて、このゾンビのせい?

だとしたら大丈夫なの? そんな疑問がぐるぐる頭の中で駆け巡るなかで。

ズドン、という鈍い音とウォォォォォォ、という聞いたこともないうめき声が耳に飛び込んだ。

音の方向から砂煙。そこから姿を現したのは彼。