「怖くないなら、できるだろ? これから先も、生きてる限りは絶対に人と接していくしかないんだ。友達くらい作れないと苦労すると思うけど?」


子ども扱いしているとわかる、優しく諭すような口調。


向けられた笑みも、宥めるためのものに見えた。


私を見つめたままの黒目がちの瞳が、否応なく心に入り込んでくる。


「それとも、やっぱり怖い?」


これは、挑発だ。


映画やドラマの台本になぞらえたような台詞と表情が、それを雄弁に語っている。


だから、クロのことなんて無視して、このまま立ち去ればいいとわかっていたのに……。


「別に怖くなんかない。今までは必要ないから行動しなかっただけなんだから」


決して逃げないと暗に込め、彼を力強く見つめ返した。


すると、クロはフッと笑みを落とし、どこか脱力したように再びベンチに腰を下ろした。


「じゃあ、俺がレッスンしてあげるよ」


「は?」


「友達の作り方……よりも、まずは人との接し方からの方がいいか。ここで話すついでに友達を作るための練習台になるから、千帆は俺で練習すればいい」


「ちょっと待って、なんでそうなるの?」


見返すつもりで挑発に乗った私は、勝手に話を進める彼に嫌な予感を抱いた。