私がシャワーを浴びている間、ツキはバスルームの前で大人しく待っていたみたいだった。


洗面台で濡れた髪を乾かしている時には私の足元で寝そべり、ドライヤーのスイッチを切るとピクリと反応して体を起こす。


「おいで。ご飯にしよう」


なにも言わなくても付いて来ることはわかっていたけど、誰よりも一番私の傍にいてくれるツキには話し掛けたくなるのだ。


だって、ツキは私の言葉を理解できているはずだから。


あくまで“たぶん”の話だけど、私の感情を敏感に感じているような行動を取るツキなら言葉も伝わっていると思う。


私に寄り添うようにトテトテと足早に付いて来るツキに笑みが零れ、憂鬱だった気分が随分と穏やかになった。


リビングに行って水分補給をしたあと、再び冷蔵庫を開けてコンビニのお弁当を出した。


仕事が忙しい両親とはあまり食事を共にすることはなくて、夕食どころか朝食ですら週末くらいしか一緒に食べることはない。


だから、両親ともに帰宅が遅くなる時には夕食は自分で用意するように言われていて、そうでない時にはダイニングテーブルや冷蔵庫に準備されている。


今朝はダイニングテーブルにお金が置いてあったから、学校帰りに近所のコンビニに寄ってお弁当を買っておいた。