「っぅ・・・ぁ、裕磨ぁ・・・っ」


麻結美さんにあって、家に走って帰った私は、あれからずっと泣いている。


「っも、こんな時間っ・・・なんだ」


かれこれ2時間泣いてたらしい。


でも、なにもする気にならない。


そんな私の視界にチカチカと光るスマホが入った。


ブーブーとバイブレーションをたてて、存在感を表すスマホ。


さっきから鳴り止まないそれは、多分春輝たちからのメールだ。


私はスマホに手を伸ばした。


「は・・・?なにこの数」


不在着信85、未読メール173。


出たくないな・・・。


なんて言われるんだろう。


「はぁ。」


誰もいない部屋に私のため息が落とされて、消えた。


当たり前のことなんだけどね。


ブーブー


また震えだしたスマホ。


「出た方がいいの?」


誰も拾ってくれない私の質問。


まあ、1人しかいないから、これも当たり前。


「出なきゃダメだよね・・・」


ボタンを触る。


1度深呼吸をした。


「・・・もしもし」


「夢羽!?今どこにいるの!?」


突然の大声に驚いて、耳からスマホを離した。


「うるさ・・・」


私の声は向こう側には聞こえていないだろう。


「春輝・・・?」


「そうだよ」


春輝が声を荒らげるなんて珍しい。


いつも落ち着いてるのに。


「家にいるよ。・・・ごめんね、勝手に走って帰っちゃって。」


「大丈夫だよ。」


いつもの優しい声の春輝で安心した。


「春輝。・・・麻結美さんとのこと、みんなに言った・・・?」


言わないでいて欲しい。


みんなに知られたくないの。


「言ってないよ。俺と喧嘩したことにしたから。今俺1人だから、この会話も誰も聞いてない。」


「そう・・・。ありがとう。」


「ううん。大丈夫だよ。」


春輝は周りをよく見てるから、他の人に言って欲しくないことも冷静に判断できる。


「夢羽は大丈夫なの?」


大丈夫じゃない。


大丈夫なんかじゃないよ。


でもね、心配なんてかけたくない。


「大丈夫だよ」


「・・・ほんとに?助けて欲しかったら、限界が来る前に言ってね。」


やっぱり春輝にはわかっちゃうんだね。


本当は大丈夫じゃないって。


「うん・・・。」


「じゃあ、また明日ね」


「春輝、私明日学校休むね。・・・飛鳥に伝えておいて」


今の状態で学校に行ったら、過呼吸になるかもしれない。


いつものいじめに多分耐えられない。


「うん。わかった。じゃあ明日の朝に、体調が悪いって言っておくね」


「うん。・・・ごめんね、ありがとう。」


「大丈夫だよ。・・・ゆっくり休んでね。」


「わかった。またね」


「うん。」


その言葉を最後に通話が切れた。


ツーツーという機械的な音がスマホから聞こえる。


「っ」


独りはさみしいよ。


春輝・・・。


・・・裕磨、ごめんね。


私のせいで死んだのに。


私は春輝のこと好きになっちゃった。


ごめん。


ごめんね、裕磨。


これが運命だったのかな。


なんて残酷な運命なんだろう。


今日麻結美さんに会うことも運命だったの?


・・・それなら私は、麻結美さんに会いたくなかったよ。


まだ立ち直れてないから。


神様は残酷だよ。


なんで私なの・・・?