「どうしてですか・・・・・?」

絞り出すような本当に小さな声で、彼は
確かにそう言った。

「え?」

「一番苦しいのは、彩なのに・・・。いつも
自分は後回しにして、自分を苦しめてっ」

よほど感情が入ってるのか、彼の顔は
真っ赤になっていた。


次第に私の胸も、鼓動が速くなっていくのを
感じる。


「一人で泣いてっ、自分だけ辛い思いをしてっ!!
大事なものは勝手に譲って!!勝手に投げ捨てて!!」


・・・・・教室には不自然に人がいなくて。
やけに静まり返ってて。

ああ、移動教室なのか。と、冷静になって
いる自分がいる。

「どうして彩ばかりが損な役に植え付けるん
ですかっ!?そんなので、彩が幸せに
なれないのは目に見えてる!!自分でも
わかってるんじゃないの!?」


それでもなお、唄鳥君は大声で・・・・
怒声にも似た声で私に詰め寄る。


「・・・・だって幸せになりたいんだもの」


それは、私が初めて人前でもらした本音だった。


「莉雨も、遼真もどっちも好きなんだもん!
大好きなんだもん!幸せになってほしいの!
私は、この関係が壊れてまで自分の意思を
持てる勇気がないの!!」


ポロポロと溢れだした涙が、透明に私の顔を
歪ませながら映している。


ああ、みっともない。

なんて、がらでもないのに考える。