一通り浴びせられた言葉、もう満足だろうと瞳で訴えてくるのがわかった。

 言葉もないまま、差し出した。

 伸ばされた指先が頭を撫でる。

 鳥肌がたつのを感じた。

 触れているワタリも気づいているはずだが、そんなことを彼は気にしない。

 指が下に降りてくる。

 心臓がやけにうるさい。

 「…罪の共有、忘れないでね」

 他の誰かに言うのは反則だとクギをさされた。

 言われなくてもわかっているという前に、首筋に突き立てられた刃に身震いがした。

 超えてはいけない境界線を飛び越えたような錯覚。

 眩暈と同時に体を駆け巡る悦、そして後悔。

 胸の中で謝罪を何回も吐いた。

 それでも事柄は既に過去として存在し、満足げに恍惚の表情を浮かべるワタリが赤い口元を拭った。

 「ごちそうさま」

 やけに色っぽいその声色に、犯した過ちの重さを実感する。

 「暫く残るだろうから、噛み傷。巻き添えは嫌だから隠し通してね」

 慌てて右手で抑えた首の噛み跡。

 新しいおもちゃでも見つけたようなワタリの目。

 「それじゃぁ、ボクはいくね」