ほんとはヒロインを演じたかった。
劇の中だけでいいから、カイトさんと結ばれてみたかった。
でも、あたしじゃ実力不足。
ヒロインを演じるのは、カイトさんの好きな人。
そして、彼女もカイトさんを好きになりそうで。
じゃあさ、もう、そこくっついちゃってよ。
身を引くなんていうキレイな言葉じゃなくて、あたしは逃げ出しただけ。
勝手に惚れて勝手に失恋しましたーって、お気楽な嘆き節。あたしにはピエロ役が似合うから。
「ハジメさんは、最近の演劇活動は?」
あたしは話題を変えた。
ハジメさんは少し、はにかんだ。
「舞台は何かと準備がいるから、最近はあんまり。声の仕事は、たびたびあるんですが」



