ひりあま―ジンジャーティーに、失恋を溶かしたら―



「よし、これならいける」


店内観察を終えて、カウンターに向き直った。

ちょうどハジメさんが紅茶を出してくれたところだった。


「どうかしましたか?」

「ん、今度、友達と一緒にここに来る予定で」

「ありがとうございます」

「友達のうちの1人が車椅子なんですよ」

「え?」


車椅子は、ちょっとした段差にも弱い。

入れるスペースが意外と限定される。

テーブルの高さとの相性が問題になることもある。


「だけど、このお店なら大丈夫そうだなって」


ハジメさんがホッとしたのがわかった。

初めて、口元の笑みが本物になった。


「ご来店いただけるなら、よかったです」