そうやってしばらく泣いた。
ハジメさんの沈黙と懐かしいロックのBGMが、すごくちょうどよく優しかった。
思う存分泣きまくったら、涙がバカバカしくなってきた。
「今さらなんですけど。あたしの名前」
「あ、はい」
深呼吸をして、あたしは、腫れた目をタオルから上げる。
困った顔のハジメさんに、笑ってみせる。
「笑う音と書いて、エミネです」
ハジメさんが、おずおずと笑った。
「いい名前ですね、エミネさん」
「でしょ?」
涙を吸ったタオルを置いて、カップを手に取る。
少し冷めたジンジャーティー。
あたしは、ひりひり甘い琥珀色を、ゆっくりと飲み干した。



