あたしはカップを置いて、手で顔を覆った。
カウンターの向こうから、慌てる気配が伝わってくる。
「お、おれ、余計なことを、その……っ」
泣きながら、笑えてきた。
「おいしいだけですよ、ほんと。こういうの、ほしかっただけ」
未練なら、飲み干してしまおう。
後悔なら、溶けてなくなれ。
あたしは、カイトさんを好きでいてよかったって思いたい。
ステキな初恋だったと言えるようになりたい。
だから、今は涙が止まらない。
のどの奥に、甘いひりひりが残っている。
優しい熱が、あたしを温めようとしてくれる。
あたしの額に、柔らかいタオルが触れた。
「使ってください」
カウンター越しにハジメさんが差し出してくれるタオルは、洗濯石鹸の匂いがする。
あたしはタオルを受け取って、ぼふっと顔をうずめた。



