「いらっしゃい、ませ……」


空気を震わしたのは、一言でいえば、イケメンボイス。

もう一言付け加えるなら、クールで有能だけど口数が少なくて不器用なせいで怖く見えて誤解されがちな雰囲気をかもし出す感じの、イケメンボイス。

ああ、やたら長い一言になっちゃった。


土曜日の午前11時。

お客さんはゼロ。

山小屋風の店内は、ナチュラルな木の香りがする。

内装もインテリアも、ほとんど彼の手作りらしい。


彼、というのは例のイケメンボイスの持ち主で、カウンターの内側で驚いたように目を見張っている人。


「お店、オープンしてる時間ですよね?」

「あ、はい……どうぞ、お好きな席に」


こぢんまりした店内を、ぐるっと見回して、あたしはカウンター席に腰掛けた。