「2人とも、しっかり見ないと」


渚にそう言われて、あたしたちは口を閉じた。


教室の中にはいつもの3人の姿があるが、真面目に勉強をしている感じではなかった。


教科書に隠して漫画を読んでいたり、机に突っ伏して寝ていたりする。


まぁ、この辺は今の高校生ともあまり変わらないかもしれない。


授業でやる気が出ないのはどの時代でも同じだったみたいだ。


その時だった教卓に立っている先生が一番後ろの席の生徒を指名し、教科書を読むように指示した。


当てられた生徒に視線を向けると、それが昨日も見た大人しい男子生徒であることがわかった。


男子生徒は困惑の表情を浮かべ、おずおずと席を立ち上がる。


瞬間、教室内から「しっかり読めよ!」というヤジが飛んできた。


その声に笑いが起きて、1人立っている男子生徒は教科書に顔を隠すように俯いた。


「うわ、典型的ないじられキャラ」


渚が小さく呟いた。


本当にそうみたいで、彼がボソボソと教科書を読み始めると、教室内に大きな笑い声が溢れた。


「おいおい、なに言ってるか聞えねぇぞ!」


3人組の1人がそう声をかける。


男子生徒は一生懸命声を張っているけれど、それでも普通に会話をするよりも小さいくらいだ。