「ひっ」


あたしは小さく悲鳴を上げて視線を逸らせた。


暗闇よりも更に黒い人影。


まるでこの世のものとは思えないその存在に、体の中から凍り付いていく。


「あの部屋って、なんだっけ?」


陽にそう聞かれても、恐怖で2階にあった部屋を思い出せない。


3年生の教室か、それ以外の教室だということしかわからなかった。


「確認しに行ったほうがいいよな」


「そ、そうだけど……」


自分の顔が青ざめているのが自分で理解できるくらいだった。


2階には行きたくない。


「おい、お前ら早いなぁ」


そんな声が聞こえてきて振り返ると、そこには海と渚と健の姿があった。


みんなの姿に少しだけ安心する。