「その人に会えませんか?」


渚がそう聞くと、近藤先輩は「悪い。その人は今外国に留学中なんだ」と、左右に首を振った。


「そうなんですか……」


一瞬見えた光が遮断された気がして、渚は視線を落とした。


「だけど、近藤先輩はその人から色々と話を聞いてるんですよね?」


そう言ったのは健だった。


「あぁ。もちろん」


「聞かせてもらえますか?」


「君たちが聞きたいなら聞かせるけれど、それが原因で栞を助けたいと言う気持ちに変化が起こるかもしれないぞ?」


近藤先輩にそう言われて、あたしは一瞬健を見た。


健は強い意思を持って近藤先輩を見ている。


陽も同じだった。


あたしたちが揺らいでいては、栞は一生あのままかもしれない。


「大丈夫です」


海がそう言い、近藤先輩はゆっくりと話を始めたのだった。