「栞はいませんでした。部屋にいたのは……」


そこまで言った時だった、お母さんの視線があたし達を通り越して下りてきて階段へ向けられている事がわかって口を閉じた。


「あら栞、お見送り?」


いつもと変わらない口調でそう言うお母さん。


あたしはゆっくりと首をひねり、後ろを振り向いた。


あたしたちのすぐ後ろに立っていたのは、さっきまでと同じ顔の歪んだ女の子だったのだった……。