そして玄関まで行き、海が戸を開ける。


旧校舎の中に足を踏み入れても、さっきとは打って変わって嫌な雰囲気はしなかった。


周囲をライトで照らしだし、栞の名前を呼びながら進んでいく。


「おかしいな。いないな……」


広間まで来て健がそう呟いた。


たしかに入口からここへ来る前の間に栞の姿は見えなかった。


「怖くなって外に出たんじゃない?」


渚が言う。


それならいいんだけど……。


念のため、一階の奥の方まで調べてみる事にした。


恐怖のあまり方向感覚を失って迷子になっているかもしれない。


一階の奥の部屋は1年生の教室になっていて、あちこちに埃が被っている。


「いないね。やっぱり外に出たんだよ」


教室を調べ終えて、渚がそう言った。


「あぁ、たぶんそうなんだろうな」


健も頷く。


ただ1人、陽だけは納得いかないような表情を浮かべていたのだった。