そう思うけれど、それを言い出す事ができずあたしは曖昧に頷いた。


生徒玄関から入って真っ直ぐ歩いていると、目的の広間が見えて来た。


「ここか」


先頭に立っていた健が立ち止まり、周囲を照らし出す。


天井がとても高く、噂の柱時計もたしかにあった。


針は止まっていて、ガラス部分は割れている。


全体的にほこりが被っていて白っぽくなっている。


「これが柱時計か。俺初めて見た」


陽が柱時計を珍しそうに目を細めて見ている。


あたしも、幼い頃おじちゃんの家で見たことがあるだけだった。


その時計も今では壊れてしまって、いつの間にかなくなってしまった。


「年期が入ってるなぁ」


陽は感心したようにそう言い、柱時計へ手を伸ばす。


「おい、もうすぐ2時だぞ」


健がスマホを確認してそう言った。


その瞬間。


柱時計が突然鳴りはじめて陽がその場に尻餅をついた。