そして、陽は箱を開けた……。


中からキラリと光るものが見えて、息を飲んだ。


「腕時計だ……」


陽が呟く。


五十嵐孝が宝石箱の中を覗き込み「間違いない、それはアキラの腕時計だ」と頷いた。


「陽、早く」


渚が声をかけると、陽はその腕時計を手に取った。


箱から出した瞬間、辺りは真っ暗になり寒気が消えた。


もう3時だ。


だけど腕時計は見つかった。


探し物は見つかったんだ。


「これが、時間を戻せる時計?」


ライトで腕時計を照らしてみても、なんの変哲もない腕時計だ。


針も止まってしまっている。


「時間を戻そう。あの頃まで」


五十嵐孝がそう言い、陽から腕時計を受け取った。


文字盤の隣にあるネジを回していく。


瞬間、窓の外が明るくなった。


あたしは目を見開いて窓を外を見つめる。


外の景色は目まぐるしく変化していく。


夏から秋、秋から冬、冬から春、春から夏へと。


時間が戻れば戻るほど旧校舎は新しくなっていく。


何人もの生徒たちが行きかい、笑い声が聞こえ、昼のお弁当の香りが流れて行った。