そして、引き出しの中からあの腕時計が取り出された。


「あれって……」


渚が腕時計を指さして呟く。


「間違いない、アキラの腕時計だ」


「なんで月子ちゃんが?」


五十嵐孝が信じられなないという様子でそう言った。


水原先生の机から腕時計を持ち出した月子は、そのまま広間へと走って行った。


あたしたちもその後を追いかける。


広間には月子があらかじめ用意していた小さな宝石箱があり、月子はその中に腕時計を入れたのだ。


「まさか、自分のものにするつもり?」


渚がそう呟いた時だった、月子は柱時計の扉を開けその中に箱を入れたのだ。


「いつか本当に必要な人が現れるよ。だからその時まで、ここにいてね」


月子は宝石箱へ向けてそう話かけ、柱時計の扉をゆっくりと閉めたのだった……。