「なんでそれを止めなかったんだ」


陽が武田陽太を睨み付けてそう聞いた。


「止めれたら止めに入ってさ。でも、できなかった。その時の先生はなんだか変だったんだ。いつもと様子が違ってた」


「様子って、どんな風に違ったんですか?」


渚がそう聞いた。


「なんていうか、切羽詰ったような、焦ったような。それでいていやらしい笑顔を浮かべてたなぁ」


武田陽太は当時を思い出したように軽く身震いをした。


「それじゃ、時計はその先生が持ってるんだな!?」


海は今にも客室を飛び出して行ってしまいそうな勢いだ。


吉原郁美先生という人のことなら、きっとアルバムを確認すれば調べる事ができるはずだ。


「それが……わからないんだ」


「え……?」


あたしは瞬きをして武田陽太を見た。


「吉原先生はその後突然失踪してしまって、今でも行方不明なんだよ……」


武田陽太の声は今にも消え入りそうだった……。