「そんなにいい声が出るんなら、授業中でももっと頑張れよお前」


「ほんとほんと、全然聞こえてねぇから」


「せっかく大きな声を出して悪いけど、誰もいねぇしな」


そう言い、また笑い声が起きる。


五十嵐孝の手が飯田アキラの腕時計を外した。


その瞬間、飯田アキラの顔が青ざめるのがわかった。


「なんだよ、別に珍しくもないただの腕時計じゃねぇか」


五十嵐孝はそう言い、つまらなさそうに腕時計を眺めた。


「返せ! それは俺の時計だ!!」


両腕を掴まれたまま抵抗を見せる飯田アキラ。


「返してほしいか? それなら宝探しをしようぜ」


閃いたように五十嵐孝がそう言い出した。


「これからこの校舎内のどこかに腕時計を隠す。お前はそれを見つけ出すんだ」


「そんなことしたくない!!」


飯田アキラはブンブンと左右に首を振った。


「お前の意見なんて聞いてねぇし。じゃ、お前らちゃんと捕まえとけよ」


そう言うと、五十嵐孝はトイレを後にしたのだった。