「あ、あああっ! サクラ、それメロンパンじゃん」
パアッと嬉しそうな目でこっちを見る。
匂いで気づいて、キラキラ目を輝かせて…
ほんと、子どもだ……。
でも、鈍感すぎる奏なんかにあげないし。
袋をふいっと、奏から遠ざけた。
「おい、なんだよ?」
「……あげないし」
眉間にシワを寄せて、こんなことで不機嫌になる。
ちょっと可愛い。
「なに拗ねてんだよ。早くよこせ」
「だめだし。……って、わっ!!」
腕をグイッと引っ張られて、奏のほうに近づいた。
そして、メロンパンを持っている腕を自分の口に近づけて
「隙あり」
そう言って、私のかじったところをかじった。
「わ、ちょっと!」
「へへ。うっめえ」
「信じらんない…!」
まあ、いつものことだけど。
でも、そのいつものことが、最近できてなかった。
だからこそ、今日この久々に前に戻れた気がして口元が緩んだ。


