「おい、どうしたんだよ」


「なんで、も…ないっ……!」



「なんでもなくないだろ? なんで泣いてんだよ?」


そっと近づいて、サクラの隣に座ると、


「奏は…、栗川さんのどこが好きなの……?」


「は? なんだよ、急に…」


突然すぎて、頭がついていかなかった。



「教えてよ」


「んー…と、全部だよ」


「なにそれー…詳しく教えて……」


「秘密だっ──……」


チラリとサクラを見ると、



「…っ…。いまは、…みないで…っ」


さっきよりも、涙を流していた。



ふとんにどんどん、サクラが流した涙のシミができていた。



「泣くなよ、サクラ……」



ポンポンと優しく頭を撫でた。



「お前の泣き顔は見たくない…」


そう呟くとサクラは、ハッ とした顔になり、俯きながら横を向いた。


「明日、久々に学校一緒に行くか」

そう言っても、サクラから表情を読み取ることはできなかった。


正直、アキのどこが好き? って聞かれたとき、最低ながら俺はなにも思い浮かばなかった。


もちろん、アキのいいところはいっぱいある。


でも、ちゃんと“好き”という気持ちがその時思えなかったんだ……。



こんな嘘をついて、サクラが傷ついていたなんて、バカな俺は気づきもしなかったんだ──…。