「悪くない。ほら、さっさと行くよ」
「うんっ!」
✻.
アキを家の近くまで送って、その帰り道を歩いていた。
アキと付き合うようになったのは、ほんと些細なことで。
アキが他の女子に囲まれて、いわゆるイジメを見た俺はアキを助けに行った。
アキとは、そのまま早退した。
でも初めは、帰ろうと言っても気を遣ってか、帰りたがらなかった。
そのあと、なんとか説得してアキを送ることになった。
『あ、あの浅海くんっ…』
アキの家の前で足を止めると、アキは精一杯口を開けて呼んだ。
『奏でいいよ。俺も……アキ? って呼ぶから』
『う、うん。じゃあ、奏くん送ってくれてありがとう』
帰ろうと今来た道を帰ろうとすると
──ギュっ
『え? アキ?』