チラっと栗川さんが私を見た。
そして、奏の胸近くのシャツをギュっと強く握りしめた。
「……っ!」
悔しいっ。
もう逃げたくなって、私は下唇を痛いほど噛みしめて教室を出た。
遠くから、私を呼ぶ奏の声が聞こえたけれど、止まることなんてもうできなかった。
「はあ……はあ…っ」
気づくと、あんまり人の来ない図書室の前にいた。
ガラガラ、と音を立てて扉を開ける。
ホコリっぽい臭いがする図書室は、古いんだなあ、と実感させる。
確かに、ここはテスト前以外は使う人なんていないから、いい場所かも。
安心したからなのか、さっきまで我慢していた涙がこぼれた。


