「…奏はさ、…きなの…?」
「え…?」
不意に、変なことを聞いてしまった。
「…あ、ううん。なんでもない」
「どうした? お前今日変だぞ」
「…そうかな? ちょっと風邪引いたのかも」
「マジかよ。明日には治せよ?」
……風邪なんて、嘘に決まってるじゃん。
「ごめん。しんどくて……今日はもう帰ってもらっても、いい?」
「あ、おう。無理すんなよ」
「じゃあな」と言って部屋から出て行く奏。
少しすると、「お邪魔しました」という奏の声と、「もう帰っちゃうの?」というお母さんの声が聞こえる。
奏は聞こえてなかったみたいだけど、
さっきは思わず
『…好きなの?』
なんて言ってしまった。


