夜、穂積と待ち合わせた茅野は、食事を奢ってもらい、服を買ってもらった。
二、三枚買ってもらっただけで、結構な金額だったが、穂積は、自分は普段、お金を使うこともないので別にいい、と言っていた。
「仕事以外にあんまり趣味がないんだ」
店を出て、海岸沿いの道を歩いていると、穂積はそんなことを言い出した。
「あー、秀行さんもそうなんですよ。
仕事が趣味っていうか。
でも、私はそれもいいんじゃないかと思うんですけどね。
よく他にも楽しみを見つけないとって言う人居ますけど。
歌い手さんとか、漫画家さんとかみたいに、好きなことをお仕事にしてるってことでいいんじゃないでしょうか」
と言うと、
「なかなかいい話だが、いちいち旦那を引き合いに出すなよ」
と穂積は腕を組み、眉をひそめる。
「あー、すみません、つい。
なんでしょう。
旦那っていうより。
ちょっと手のかかる兄って感じなんですよね」
「うん。
それを茂野が聞いたら大激怒すると思うぞ」



