「け、結婚詐欺って、なにをするんですか?」

「結婚するフリして、男から金を引き出すんだよ」

「そんな技、私にあるわけないじゃないですかっ」

「大丈夫だ。
 俺を引っかけて、ビックリするくらいの大金を貢がせただろうが」
と言い出す。

 そんな話だっけ? これ、と思った。

 図書館で出会って、あっという間に、実家に押し掛けてくるようになって。

 知らない間に、結納の準備が整っていた。

 みんな張り切って、結婚の準備をしていて、会社の方もこれで助かると、子供の頃から顔なじみの役員のお爺さんたちにも手を握って喜ばれ、なにも言えなくなった。

 それにしても、人生の一大事である結婚さえも上手くいかない私のショボイ人生も視点が違うと、まったく違う人生に見えるもんだな、と感心する。

 急に、自分が男を手玉に取る悪女になった気がして、気が大きくなりそうになった。

 簡単に二、三人捕まえて、貢がせることができるような。

 もちろん、そんなはずもないのだが。