私、今から詐欺師になります

「そうだな。
 その会社、潰してやろうか」
と鼻で笑う秀行を真っ直ぐ見返し、

「調子に乗ってると、潰されますよ」
と言ってやると、秀行は、特に表情は変えなかったが、一瞬間があった。

 すぐに口を開いて言う。

「ひやりとするようなことを言うな」

 いつか俺と離婚したさにお前がやるような気がしてしょうがない、と言い出す。

「なにも出来ない私にそんなこと出来るはずありません。
 私には、なにも出来ないって常々言ってるのは、秀行さんですよ」

 ……まあな、と言ったあとで、秀行は、
「やっぱり、風呂に先に入る」
と言い出した。

「そうですか、じゃあ」
と食事を温めるのをやめようとしたとき、腕をつかまれた。

「な、なんですかっ」

「外に出て、浮気してないか確かめてやる。
 一緒に入れ」

「い、嫌ですよっ」

 よいしょ、と秀行は茅野を荷物のように肩に担ぐ。