帰宅後、自分の食事は玲と済ませたので、茅野は秀行の分だけ作っていた。
「ただいま」
帰って来た秀行が、
「ほら、茅野」
と携帯を渡してくる。
「ビルの受付で預かってたそうだ。
お前、昨日、落としてたのか?」
茅野は中を確認しながら、ありがとうございます、と言った。
友だちから何通かメールが入っている。
特に急ぐものではなかったが。
秀行の手にこの携帯が渡っていることは確認してあった。
受付の女性が無事に持ち主に返ったと玲に連絡してきたからだ。
「すぐ食事の用意しますね」
と携帯を置いて、キッチンに戻ろうとすると、
「お前、今日、家に居なかったな」
と秀行が言ってくる。
家の電話にも、もちろん電話していたのだろう。
「はい。
働いてるので」
「何処でだ」
「内緒です」
「なんでだ」
「絶対、邪魔しに来るからです」



