私、今から詐欺師になります

「茅野ちゃんみたいにタチ悪くない子に騙されてみるのもいいんじゃない？

　それに、男はわかってても、騙されたいときもあるんだよ。

　……なに笑ってんの？

　僕がこの格好で男を語るとおかしい？」

「いえ。
　玲さんは、どんな格好なさってても、男らしいですよ」
と茅野は微笑む。

「びっくりするくらい綺麗だけど、男の人ですよねー」
と言うと、横を歩く玲はなにも言わなかった。

　玲さん？　と振り返ると、
「いやー、ほんと君は手練の詐欺師かもね」
と言ってくる。

　ええっ？

「なんかこう、ツボをついてくるんだよ。
　欲しい言葉をくれるっていうか。

　無理やり結婚した茂野ばかりを責められないんじゃないかな？

　ああいう、いつも張り詰めてる奴は、茅野ちゃんみたいなのを側に置いて、ほっとしたり、笑ったりしたいんだよ」

「あの、笑ったり、がちょっと気になるんですが……」

　どうも微笑むの笑うではない気がして追求すると、玲も笑って言った。