私、今から詐欺師になります

「そうだ。
 玲さん、お暇ですか?

 なにか食べに行きませんか?
 今日は千円だけ宝くじ買うことにするので、奢りますよ」

「奢ってはいらないよ。
 初給料でしょ。

 自分のために使うか。

 そうだ。
 ご家族にでもなにか……

 ああ、茂野以外の」
と言われたので、少し笑い、

「秀行さんにもなにか差し上げたいんですけどね。
 あの人がああ言ってくれたから、働きに出る気になれたので」
と言うと、

「なに?
 やっぱり、これ、ただの社会見学なの?

 うちの兄貴を騙してくれる気はないの?」
と訊いてくる。

「いえ、でも、よく考えたら、穂積さんのような良い方を騙すなんて、非常に申し訳ないことのような気がするのですが」

「あのさ。
 兄貴はああ見えても、女性経験があまりなくてさ。
 騙してやってよ」
と言われ、ええっ? と言う。