私、今から詐欺師になります

 



「茅野ちゃん、待って待って。
 ぼ……私も帰るからー」
と言う玲の声がし、茅野は閉まりかけたエレベーターの扉を開けた。

 こんな時間に帰る人は、このフロアには居ないらしく、玲のために止めても、特に問題はなかった。

「いやー、茅野ちゃんは、なにで帰るの?」

「バスです」
「じゃあ、バスセンター?」

「はい。
 でも、実は寄り道しちゃおうかと」

 ふふふ、と茅野は笑う。

「なになに?
 なにか悪いことするの?」

「宝くじ買いに行こうかと思うんです」

「宝くじ?」

「毎日、いただいたお金で宝くじを買おうかと思って」

「えっ。
 全額?」

「いえ。
 当たらなかったときのために、半分だけ」

「……うん。
 ほぼ当たらないと思うけどね」